脈拍数の正常値は、一般成人で60~100回が基準値となります。 脈拍とは、心臓が血液を全身に送る際、動脈に生じる脈動のこと。 1分間に感じられる脈拍を測定した値が、脈拍数です。
看護において、脈拍数の変化に気づくことはとても重要と言えます。 この記事では、脈拍数の正常値を、性別や年齢別に詳しくご紹介いたします。 他の脈拍数に関する情報も、詳しくまとめました。
看護の現場で活躍される、あなたのお役に立つ記事となっています。
目次
一般成人の脈拍数の正常値は、60~100回が基準値となります。
患者さんの脈拍を測定した際、正常な値なのか気になるところ。 健康の目安となる、脈拍数の正常値について、詳しくご紹介いたします。
また、脈拍数が60回未満、または100回以上と正常値から外れた場合、どうなるのかもまとめました。
一般成人の脈拍数は、60~100回 が正常値となります。
もしも脈拍が100回を超えると「頻脈」、60回未満だと「徐脈」と診断されます。 脈拍の異常は、体調不良や病気発見の目安となるもの。 脈拍数の正常値を知ることは、看護において重要となります。
しかし、正常値はあくまで目安です。 心臓の疾患があったり、医師の前で緊張しがちだったりする方は、脈拍数が100回を超えることもあります。 また、普段から運動をする方は徐脈傾向にあるため、脈拍数が60回を下回っても正常と捉える場合も。 患者さんの脈拍平均値を把握し、個人の正常値を知っておくと良いでしょう。
1分間の脈拍数が60回未満の場合を、「徐脈」と言います。 就寝中や起床時などのリラックスした時は、脈拍数が少なくなります。
また、日常的に長距離走などの運動をしていると、心肺能力が高く脈も遅くなりますので、60回未満が正常値なことも。 上記の場合は心配いりませんが、急に徐脈となる場合は注意が必要です。 息切れやだるさ、足のむくみ、めまいなどの自覚症状も感じる場合は、以下の病気が疑われます。
・洞不全症候群…心臓の洞結節(どうけっせつ)が正常に機能せず、心臓を動かす電気刺激の回数が減る、もしくは止まる病気です。
・房室ブロック…電気信号を心房から心室へ伝える房室結節の、機能低下により起こる病気です。失神や心不全、突然死に繋がることも。 自覚症状を伴う徐脈の場合は、早めの受診が必要と言えるでしょう。
1分間の脈拍数が100回以上の場合を、「頻脈」と言います。 脈拍数は、緊張や興奮状態により、交感神経の働きが優位になると多くなります。
また、精神的に強いストレスを感じることも、脈拍数が増える原因の一つです。 運動や入浴でも、一時的に増えます。 注意が必要なのは、貧血やホルモンバランスの乱れが原因な場合。 以下の病気を発症する可能性があります。
・脳卒中…脳血管の詰まりや破れが原因で、脳に障害が起きる病気です。
・心筋梗塞…冠動脈の詰まりで血液が流れなくなり、心筋が壊死する病気です。
・突然死
病気の発症を予防するため、早めの受診が望ましいでしょう。
脈拍数と血圧は、普通逆方向に変化します。 血圧が上がると脈拍数が下がり、血圧が下がると脈拍数が上がる傾向にあるのです。
また、健康な体の場合は、緊張や興奮状態になったり、運動したりすることで脈拍数が上がっても、すぐに落ち着きます。 しかし、高血圧が進行していると、脈拍の戻りが遅く、血圧も高くなります。 もしも高血圧で脈拍数も多い場合は、心疾患の発症や死亡のリスクが高まる恐れが。
逆に、脈拍数が少ないのに血圧も低下する場合は、心臓の電気刺激に異常がある可能性があります。 血圧と脈拍数は、日ごろから合わせてチェックしておくと良いでしょう。
一般成人の安静時の脈拍数は、平均で60~70回/分ですが、環境によって変化します。 緊張や興奮状態、ストレスなど要因は様々ですが、運動環境によっても変化するのです。
日常的に激しい運動をしている人は、安静時の脈拍数が少ないことが分かっています。 逆に、運動を全くしない人は、脈拍数が多くなる傾向に。 運動環境によりなぜ脈拍が変化するのか、具体的に知りたいというあなたに、詳しくご紹介いたします。
日常的に激しい運動をしている人は、脈拍数が少ないという結果が出ています。 マラソンや水泳などのスポーツ選手が当てはまり、安静時の脈拍数が45回ほどと一般成人より少ないのです。
激しい運動を日常的に行っていると、体が多量の血液を必要とし、心臓の筋肉が発達します。 その結果、心臓が肥大化し、一回の血液拍出量が増えるため、安静時の脈拍数が減少するのです。
上記のような心臓は、『スポーツ心臓』と呼ばれることも。 スポーツ心臓になり脈拍数が少ないことで、一度に多くの血液を送ることができます。 全身の筋肉に、酸素を多く含んだ多量の血液が行きわたり、競技パフォーマンスが向上するのです。
運動を全くしていない人は、安静時の脈拍数が101回~と多い傾向にあります。 運動することは、心拍数を上下させ心臓を鍛える働きがあるのです。
つまり運動不足は、心臓の働きを弱めるため、結果脈拍数が増えることになります。 また運動をしないと、以下のデメリットもあります。
・筋肉量の減少や血行不良を起こし、心臓に血液が戻りにくくなる
・自律神経が乱れ、不整脈を起こす
・生活習慣病になりやすくなる(心臓病などのリスクが高まる)
いずれも心臓の機能が低下し、脈拍数の増加につながる恐れが。 改善するために、ウォーキングやジョギングなど、適度な有酸素運動を生活に取り入れると良いでしょう。
性別や年齢別で、脈拍数の正常値と基準にされている数値は、変化します。 男性より女性の方が、脈拍数が多い傾向にあるためです。
また、高齢者になると脈拍数は減少します。 看護するにあたり、性別や年齢による脈拍数の違いは、覚えておくと便利です。 この章では、性別・年齢別に、脈拍数の正常値を詳しくご紹介いたします。
20代~30代の、脈拍数の正常値(安静時心拍数の中央値)をご紹介いたします。
・20代…男性が63回前後、女性が69回前後
・30代…男性が66回前後、女性が69回前後
心臓の動きがもっとも発達しているのは、10代後半~20代前半と言われています。
以降は徐々に働きが弱まりますが、30代以降から高齢前まではほぼ変化しない方がほとんど。 脈拍数を正常に保つためには、20代頃から日常的に運動を取り入れると良いでしょう。
また、20代~30代の女性に多い『バセドウ病』には、頻脈(脈拍数が100回以上)などの自覚症状があります。 若い頃から、脈拍数を計測することで病気の早期発見につなげることができます。
40代~50代の、脈拍数の正常値(安静時心拍数の中央値)をご紹介いたします。
・40代…男性が67回前後、女性が69回前後
・50代…男性・女性ともに68回前後
20代~30代に比べ、脈拍数が多くなる傾向にあります。 しかし、大幅に脈拍数が増えた場合は、注意が必要です。 心不全や脳卒中などの病気になるリスクが、高まると言われています。
脈拍数を安定させるためには、適度な運動を心がけましょう。 また、40代頃から高血圧になる方が増えていきます。 健康維持や病気の早期発見のために、脈拍と血圧両方を日ごろから確認しましょう。
60代~70代の、脈拍数の正常値(安静時心拍数の中央値)をご紹介いたします。
・60代…男性が67回前後、女性が68回前後
・70代…男性が63回前後、女性が66回前後
65歳頃から、心臓の動きが徐々に弱まっていきます。 そのため、脈拍数が少ない傾向にあります。 しかし、脈拍数は加齢だけでなく、洞不全症候群や房室ブロックなどの病気でも変化します。
脈拍数の減少が、加齢によるものなのか、他に原因があるのか見極めることが重要です。 また、加齢により不整脈も起きやすくなるため、注意が必要となります。
80代~の、脈拍数の正常値(安静時心拍数の中央値)をご紹介いたします。
・80代~…男性が61回前後、女性が65回前後
高齢者は、成人に比べて脈拍数が少ない傾向にあります。
理由は、心肺機能が低下したり、活動量や代謝が減少し心臓がそれほど働かなくても良くなったりするためです。 また、通常は体温の上昇とともに脈拍数も増えます。 体温の上昇で血管が拡張することによる、血圧の低下を防ぐために心拍数(≒脈拍数)が上がるからです。
しかし、80代以上の高齢者は、入浴後の体温上昇時でも、脈拍が増加しないという研究結果が。 そのため、入浴時に血圧が一定に保てず、死亡する事故が起きるのです。 80代以上は、入浴時の脈拍数の変化にも注意しましょう。
脈拍数の正常値は、一般成人では60~100回と言われますが、性別や年齢で違いがあると分かりました。
また、脈拍数が60回未満の「徐脈」、100回以上の「頻脈」は、それぞれ病気を抱えている可能性が。 脈拍数と血圧の関係性を理解し、日ごろからチェックすることで、病気の早期発見につなげられます。
そして脈拍数は、運動環境によっても変化します。 日ごろから適度な運動を取り入れ、脈拍数の正常値を保つと良いでしょう。 脈拍数の正常値への理解を深め、ぜひ看護にお役立てください。