介護や医療分野で働く人や家族の介護が必要な人は、「障害高齢者の日常生活自立度」というものを目にしたことがあると思います。
しかし、中身を知らない方も多いと思います。 この記事では「障害高齢者の日常生活自立度」について、皆様にわかりやすく内容や評価尺度、使用目的などをお伝えします。
目次
障害高齢者の日常生活自立度は、厚労省によって規定されている評価尺度です。 別名、寝たきり度とも言われております。
年齢65歳以上の障害を持った高齢者がどれくらい自立した生活を送れているかを判定する指標になります。 フローチャートで示されることがあります。
障害高齢者の日常生活自立度は、地域や施設等の現場において何らかの障害を有する高齢者の日常生活自立度を、客観的かつ短時間に判定することを目的として作成されたものです。
保健師や看護師、介護支援専門員などが障害高齢者の情報を簡潔に共有するために利用されています。 また障害高齢者の状況を簡潔に把握できるため、要介護の認定調査や介護サービスに関する書類、 医療連携の看護サマリーなどにも利用されています。
障害高齢者の日常生活自立度の覚え方は、まず大枠を覚えます。
J:外出自立
A:屋内自立
B:ほぼ寝たきり
C:寝たきり
という段階で覚えましょう。
Jは活動範囲によりJ-1:遠方、J-2:近所。
Aは日中の活動によりA-1:日中活動、A−2:日中寝たきり。
Bは日中からベッド主体の生活なので、食事・排泄の介助の有無によりB-1:介助なし、B-2:介助あり。
Cは寝返りの可否によりC-1:可能、C-2:不可能。
判定基準は「~をすることができる」といった「能力」の評価ではなく「状態」、特に「移動」に関わる状態像に着目して、 日常生活の自立度を4段階(J、A、B、C)にランク分けすることで評価します。
ランクJの判断基準は、「何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する」状態であることです。
何らかの障害とは、病気や怪我、あるいは老衰によって生じた身体機能低下のことを指します。 ランクJは「生活自立」に分類されます。基本的にランクJに区分されるのは一人でも問題なく外出できる方です。 ランクJは行動範囲により、「J-1」「J-2」に分かれています。
ランクJ-1の判断基準は、「交通機関等を利用して外出する」状態であることです。 つまり行動範囲が広いということです。
例えばバス、電車等の公共交通機関を利用して積極的に外出している人が該当します。 積極的にということなので、日々の習慣で外出していることになります。 旅行などで遠方に外出する人も該当します。
ランクJ-2の判断基準は、「隣近所へなら外出する」状態であることです。 J1と比較し、独力で外出できるのは変わりませんが、行動範囲が狭くなります。
例えば隣近所への買い物や老人会等への参加等、町内の距離程度の範囲まで外出する場合が該当します。 社会参加の範囲は身体的・精神的にも周辺地域の中に制限されているような状態です。
ランクAの判断基準は、「屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない」状態であることです。 ランクAは、「準寝たきり」に分類され、「寝たきり予備軍」と言われます。
屋内での日常生活のうち食事や排泄、更衣、整容などに関しては概ね自分で行います。 しかし近所に外出するときは介護者の援助を必要とする場合が該当します。 ランクAは日中の活動具合により、「A−1」「A−2」に分かれています。
ランクA-1の判断基準は、「介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する」状態であることです。
例えば自宅内ではしっかり食事、排泄、着替えなど身の回りのことは自身で行い、 日中の時間帯はベッドや布団から離れている時間が長い状態の方が該当します。 自宅内であれば活動的に動ける人です。 介護者がいれば、比較的頻回に外出できる人が該当します。
ランクA-2の判断基準は、「外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている」状態であることです。 例えば食事、排泄、着替えなど身の回りのことは自身で行えるが、日中から寝たり起きたりする方が該当します。
基本的に活動的な場合は、終始ベッドから離れて、日中は起きていることが多いと思います。 しかし、ランクA-2の方は日中からベッドや布団にいる時間もあり、活動的とは言えません。 そのため、介護者がいれば外出できるにもかかわらず、稀にしか外出しない人が多いです。
ランクBの判断基準は、「屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つ」状態であることです。
ランクBから「寝たきり」に分類されます。 1日のほとんどをベッドで過ごすことが特徴ですが、食事や排泄は座ってできる人が該当します。 またランクAとは異なり、屋外に加え、屋内の生活活動にも介助が必要です。 移動に関しては、車いすが必要な状態になります。 ランクBは移乗能力により、「B−1」「B−2」に分かれています。
ランクB-1の判断基準は、「車いすに移乗し、食事、排泄はベッドから離れて行う」状態であることです。
例えば、1日のほとんどはベッドで過ごしているが、食事や排泄はベッドから離れて座って行っている人が該当します。 また移動は基本的に車いすを利用します。 ベッドから離れる際の移乗は1人で行えることがB−1の条件になります。
ランクB-2の判断基準は、「介助により車いすに移乗する」状態であることです。 B-1と同様に1日のほとんどはベッドで過ごしているが、食事や排泄はベッド上、もしくはベッドから離れて行っている人が該当します。
移動は基本的に車いすを利用します。 B−2はベッドから離れる時から介助が必要です。 つまり、移乗動作に介助が必要であることがB−2の条件になります。
ランクCの判断基準は、「1日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、更衣において介助を要する」状態であることです。 ランクBと同じく「寝たきり」に分類されますが、ランクCはランクBより障害の程度が重い方が該当するグループです。 食事や排泄に介助が必要な状態です。 ランクCは寝返りの能力により、「C−1」「C−2」に分かれています。
ランクC-1の判断基準は、「自力で寝返りをうつ」状態であることです。 例えば、1日中ベッドの上で臥床しており、食事や排泄に介助が必要な人が該当します。
排泄に関してはオムツや尿器を使用しており、ベッド上で排泄を実施している人が該当します。 ベッド上での生活に介助が必要だが、自分自身で体位交換、つまり自力で寝返りができる人がC-1に該当します。
ランクC-2の判断基準は、「自力では寝返りもうてない」状態であることです。 例えば、ランクC-1と同様に、1日中ベッドで臥床しており、ほとんど動けない人が該当します。
食事摂取が傾向から困難であり、胃ろうなどの経管栄養である人が該当します。 また障害が重度であり、自分自身で体位変換ができず、寝返りなどの体位変換に介助が必要な人がC−2該当します。
障害高齢者の日常生活自立度は、医療従事者の情報交換時のツールとして利用されます。 簡潔に状態を共有できます。
また要介護認定の認定調査や主治医意見書などに使用されています。
「要介護認定」の認定調査とは、要介護認定を判定するための聞き取り調査です。 申請を受けた市町村から認定調査員を派遣し、要介護者の心身の状態を確認します。
聞き取り調査は74項目の基本調査があり、その1つに日常生活自立度を調査します。 「障害高齢者の日常生活自立度」と「認知症高齢者の日常生活自立度」を組み合わせて、介護度が決定されます。
要介護認定後、ケアマネージャーなどが利用者の生活に合わせたケアプランを作成します。 ケアプランは基本情報、課題分析、サービス計画書で構成されます。 基本情報の中に生活歴や主訴、病歴以外に日常生活自立度が記録されます。
障害高齢者の日常生活自立度はサービスを検討していく上での重要な情報になります。 いつ、どの程度の介助が必要なのかを判断する材料になります。
障害高齢者の日常生活自立度は、障害をもつ高齢者の生活の自立度を簡単に表した評価方法です。 身の回りの動作や家事動作、移動方法など詳細な動作の確認は行えませんが、全体像を掴むために役立ちます。
今回の情報が今後の医療系、介護系で関わる方との情報共有の助けになれば幸いです。