最近では、ニュースや新聞でも【高齢者虐待】という言葉が使われることが多いです。介護者による虐待は、家族や身内だけでなく介護施設で勤務するスタッフも、何気ない言葉や行動が虐待になってしまうため注意が必要です。
この記事では、高齢者虐待の種類・高齢者虐待防止法や、虐待の事例について紹介します。
高齢者虐待とは、介護施設・親族などから、高齢者が身体的・経済的・心理的に権利を侵害されることです。個別に行われるだけでなく、様々な要素・原因から虐待行為が行われていることが考えられます。
また、最近では、ニュースや新聞でも大きく取り上げられて、介護施設でも【接遇】についての研修などが行われています。介護施設でよく使用される、4点ベット柵やミトンなどの使用も【身体拘束】となるので、安易に行えず注意が必要です。
高齢者虐待には、【身体的虐待】【ネグレクト】【心理的虐待】【性的虐待】【経済的虐待】の5種類あります。家で家族・同居人から受ける場合、介護施設で受ける場合があります。この章では、高齢者虐待の種類について解説します。
暴力的な行為で傷やあざ痛みを与えること・外部との接触を意図的に遮断することです。具体例として、平手打ちや殴る・蹴るなどの暴力行為、介護者が食事を「食べたくない」と言っているのに無理やり食べさせる行為も虐待です。
また、介護事業所では「動いてしまって危険だから。」という理由で別途に縛り付けることも身体的虐待です。家族での介助だけでなく、介護事業所としても介護方法を見直し、介護士が接遇に注意して介護サービスを提供することが必要です。
ネグレクトとは、介護の放棄・放任することです。具体例としては、おむつ交換を行わないで長時間放置する。入浴をしない、水分や食事が十分に与えられない。などがあります。
食事や入浴においては、声掛けの方法を変える、呼びかけるスタッフを変えるなどして、「どうやったら入浴・食事を行ってもらえるか。」を考える必要があります。
介護チームで対策を考えて、質の高い介護を提供しましょう。
心理的虐待とは、高齢者に暴言や介護を拒絶する態度を取り、心理的に傷つけることです。事例としては、失敗したことについて怒鳴る・あざ笑うことが挙げられます。また、名前の呼び方や言葉遣いで、高齢者を子供扱いすることも心理的虐待にあたります。
介護士自身が自分の声掛けや対応の仕方を見直すことが必要です。また、不適切な声掛けを見かけたときには、上司のスタッフに相談しましょう。
性的虐待とは、高齢者にわいせつな行為をすること・強要することです。介護施設では、排泄介助・入浴介助時にカーテンやパーテーションなどでプライバシーを保護することをきちんとしましょう。
高齢者の羞恥心を保護することに繋がり、排泄・入浴などは介護職員の配慮が必要な部分です。入浴の介助の時には、男女で入浴時間を分けてスタッフも同性介助を行うことが望ましいです。利用者のプライバシー保護にも気を付けましょう
介護者が高齢者の財産を不当に処分すること、高齢者の合意なしに金銭を使用することです。具体例としては、
が挙げられます。高齢者は年金で生活しているため、収入が少ない方が多いです。不当に使われることはあってはならないことですので、発見次第地域包括センターに相談しましょう。
高齢者虐待法とは、高齢者が虐待を受けないように、又は虐待を受けた高齢者が迅速・適切に保護されるために作られた法律です。この法律では、虐待の捉え方や事例に基づき必要な援助についてが詳しく決められています。
認知症や、介護者の重介助が原因で起こることが多く、近年増え続けているのが現状です。地域や施設では虐待が起きないように予防をすることが大切です。少しでも負担を減らすことが、高齢者虐待の予防につながります。
高齢者虐待が起きた時の連絡先は、市町村役所の窓口・地域包括センターです。役所や地域包括センターは、訪問することで事実確認をして、場合によっては高齢者の保護・擁護者の負担を減らすための支援をします。
介護施設の場合は、まず各部署の責任者へ報告しましょう。その後施設長・責任者を中心にスタッフへの聞き取り調査を行い、虐待の事実が確認された場合は再発防止のために施設内で対策をします。
市町村は、利用者・家族・職員への聞き取り調査を行い、虐待の疑いがあると判断した場合は行政に通報します。行政は、市町村から報告を受けてから該当施設の調査を行います。調査の結果、虐待だと判断した場合、施設に対して改善するための指導を行います。
介護施設では、高齢者に対する何気ない言葉かけも身体的・精神的に抑制してしまう場合もあります。
多くの施設で、「ちょっと待って。」「○○しないでね。」などの、利用者の行動を抑制する言葉が多く使われています。
例えば、利用者様が「トイレに行きたい。」「部屋に戻りたい。」というときに、「もう少し待っていてね。」「ちょっと待ってね。」などの言葉が使われています。
現場の状況によって、すぐに対応することが難しい場合もありますが、「少々お待ち下さい。」と丁寧な声掛けや、「先ほど言ったばかりなので、後10分したらまた行きましょうか?」など、時間を明確にした声掛けをすることで利用者も待ってくれる場合があります。
自宅での高齢者の虐待には、介護の重度化や認知症の悪化が多くの原因になっています。介護サービスを利用することで、少しでも介護をする家族の負担を減らすことが虐待を予防するために重要です。
介護施設では、人手不足・介護の知識や技術不足が虐待の原因です。自宅・介護事業所ともに、「怒らない」「否定しない」を意識することが大切です。相手の気持ちに寄り添い、介護者も高齢者も過ごしやすい介護を心がけましょう。