バーセルインデックスとは?評価用紙や項目の覚え方なども解説!

2023.06.15
  • 介護の豆知識

バーセルインデックスとは、ADLを簡易的に評価する方法です。 ADL維持等加算の算定要件にもなっています。

この記事では、バーセルインデックスの目的や、メリット・注意点などを詳しくご紹介いたします。 また、評価する項目の覚え方や、判定基準についてもまとめました。

忙しい医療や介護の現場でも取り入れやすい、バーセルインデックス。 どのような評価ツールなのか気になるあなたのために、早速ご紹介いたします。

バーセルインデックスとは?

バーセルインデックスとは、ADLを簡易的に評価する方法です。 ADLは、食事や入浴、排せつなどの日常生活動作のこと。

原則的に「できるADLを評価」するものですが、具体的にどのようなツールなのか気になられるかと思います。 この章ではバーセルインデックスについて、目的などを詳しくご紹介いたします。

できるADLを評価する

バーセルインデックスは、原則的に「できるADL」を評価するツールです。 「できるADL」というのは、訓練時・評価時に発揮される能力のこと。

「普段の生活では行っていないけれど、リハビリ中にはできる」という場合は、「できるADL」と評価されます。 バーセルインデックスは、以下のように採点します。

・食事や整容などの10項目で構成(後ほど各項目について、詳しくご紹介いたします)
・「自立、部分介助、全介助」を基本とし、2~4段階で評価
・合計点数は、全て自立していると100点、全て全介助で0点となる

一般的には60点が部分自立と介助の分岐点とされ、85点以上を自立とみなします。

バーセルインデックスの目的

バーセルインデックスの目的は、対象者のADLを簡易的、かつ客観的に評価することです。

全10項目と項目数が少なく、環境や条件などの細かい設定も無いため、短時間で評価することが可能です。 また、各項目を0~15点の中で点数付けしていく方法で、ADLを客観的に数値化できます。

評価者の主観のみでADLを評価してしまうと、結果にばらつきが出てしまうでしょう。 バーセルインデックスを用いれば、簡易的、かつ明確に数値化してADLを把握できるのです。

忙しい医療や介護の現場で、取り入れやすい評価ツールと言えます。 また、バーセルインデックスは、ADL維持等加算の算定要件となっています。

厚生労働省のホームページでは、バーセルインデックス測定のマニュアルや動画を公開しています。 ぜひご参照ください。

バーセルインデックスで評価する項目と覚え方

ADLの中で、バーセルインデックスで評価するのはどれかと言いますと、以下の10項目になります。

1.食事
2.車いすとベッド間の移乗
3.整容
4.トイレ動作
5.入浴
6.歩行
7.階段昇降
8.着替え
9.排便コントロール
10.排尿コントロール

各項目の点数と評価基準について、覚え方も合わせて詳しくご紹介いたします。

食事

「食事」の点数と評価基準は、以下の通りです。配膳や下膳は評価に含まれません。

【自立:10点】
・手の届く範囲に食事をセッティングすれば、自力で食べられる
・自助具が必要な場合は、自分で装着できる
・食事にかかる時間は標準範囲内である

【部分介助:5点】
・エプロンの装着や、食事を食べやすく切ってもらう必要がある(調理段階で切る場合は、該当しない)
・一人で食べられたとしても、標準時間以上にかかる場合は部分介助となる

【全介助:0点】
・全面的に介助が必要 覚え方としましては、「部分介助」は少しでも介助や見守りが必要、「全介助」は全て介助が必要と考えてください。 例えば胃ろうなどの経管栄養をされている方は、準備から片づけまで自分で出来るのなら、「自立」となります。 全て介助にて行うのでしたら、「全介助」です。

車椅子からベッドへの移動

「車いすからベッドへの移乗」の点数と評価基準は、以下の通りです。

【自立:15点】
・移乗に必要な動作(車いすをベッドに近づける、ブレーキをかける、フットサポートを持ちあげる、ベッドへ移動する、ベッドで横になる、起き上がってベッドの縁に腰掛ける、車いすの位置を変える)を、安全に自力で行える

【部分介助:10点】
・移乗に必要な動作で、一部介助が必要、また安全のための見守りや言葉かけが必要である

【部分介助:5点】
・起き上がってベッドの縁に腰掛けることはできるが、移乗動作に介助が必要

【全介助:0点】
・全面的に介助が必要 「部分介助」の10点と5点の違いは、以下のように覚えてください。

10点は、最小限の介助や見守り、言葉かけが必要です。 5点は、起き上がって腰掛けることは可能ですが、移乗時にかなりの介助が必要となります。 また、移乗時に手すりを持ったとしても、見守りなく行えれば「自立」となります。

整容

「整容」の点数と評価基準は、以下の通りです。

【自立:5点】
・整容の動作(手洗い、洗顔、整髪、歯磨き)と道具の管理が自力で行える
・男性は髭剃りも含まれ、道具の管理や動作も一人で行える
・女性は化粧も含まれる

【部分介助または全介助:0点】
・整容の動作に一部介助や見守り、もしくは全介助が必要 整髪動作とは、髪をとかす動作のことです。 髪型を整えたり、髪の毛を編んだり結んだりすることは、評価対象になりません。 また、顔を洗えずおしぼりが必要、歯ブラシに歯磨き粉を付けてもらうなど、一部分だけ介助が必要な方は「部分介助」の対象です。

トイレ動作

「トイレ動作」の点数と評価基準は、以下の通りです。

【自立:10点】
・トイレ使用における動作(トイレへの出入り、衣類の着脱、トイレやトイレットペーパーの使用、後始末)を安全に自分で行える
・汚染した紙パンツやパットの交換ができる
・ポータブル尿器などの用具の使用や、管理が自分で行える

【部分介助:5点】
・トイレ使用における動作に、一部介助が必要
・立ち上がりやトイレに座る際にバランスが取れず、介助が必要

【全介助:0点】
・全面的に介助が必要(ベッド上でのオムツ交換も含む) 「自立」の覚え方の一つは、後始末まで自力で行えるということです。 紙パンツやパット、ポータブル尿器などの道具を使用していても、後始末まで自分で行えれば「自立」となります。 後始末のみでも介助が必要となりますと、「部分介助」となるのです。

入浴

「入浴」の点数と評価基準は、以下の通りです。 【自立:5点】・入浴における動作(体や髪を洗う、シャワーの使用、浴槽の出入り)を、安全に自分で行える       ・習慣上浴槽に浸からない人は、シャワーのみでの入浴でも可 【部分介助または全介助:0点】・入浴における動作に、一つでも見守りや介助が必要               ・浴室内での歩行や、浴槽の出入りが不安定で、見守りが必要               ・機械浴で入浴する 「入浴」では、転倒の危険性から少しでも見守りが必要であれば、「部分介助」で0点となります。 また、施設や病院では、浴室に手すりが設置されていることがほとんどです。 もし手すりなどに掴まって入浴しても、見守りなく自分で入れるのであれば「自立」だと覚えてください。

歩行

「歩行」の点数と評価基準は、以下の通りです。

【自立:15点】
・45m以上を、自分で安全に歩行できる
・義肢や装具(車いす、車輪付き歩行器は不可)の使用は可
・装具のロック動作や、必要な位置へに配置が自分で行える

【部分介助:10点】
・45m以上を、見守りや脇を支えるなどの一部介助で歩行できる
・車輪付きの歩行器を使用して、安全に45m以上を歩行できる

【車いす:5点】
・歩けないが、車いすを自分で駆動し、安全に45m以上を進められる
・車いすの駆動動作(角を曲がる、方向転換する、ベッドやトイレなどへ行ける)を安全に行える

【全介助:0点】
・歩行や車いす駆動ができても、45m以上の移動ができない
・車いす使用時、全面的に介助が必要 歩行時に使用する装具には、杖や松葉づえも含まれます。 義肢などの装具の着脱は、「歩行」ではなく「着替え」の項目で評価します。

また、車いすを使用していても、歩行できる場合は「自立」か「部分介助」で評価すると覚えてください。

階段昇降

「階段昇降」の点数と評価基準は、以下の通りです。

【自立:10点】
・階段の昇降を、自分で安全に行える
・手すりや杖の使用は可

【部分介助:5点】
・階段の昇降を自分で行えるが、転倒の危険性があり見守りが必要
・体を支えるなどの一部介助が必要
・手すりや杖を使用しても、見守りや一部介助が必要

【全介助:0点】
・階段の昇降が行えない、もしくは全てにおいて介助が必要
・3~4段しか昇降できない 「階段昇降」では、階段の段数は問われません。

評価の目安は、1階分の階段を昇降できるかどうかだと覚えてください。

着替え

「着替え」の点数と評価基準は、以下の通りです。

【自立:10点】
・衣服や靴、装具の着脱を自分で行える
・着替えにかかる時間は標準範囲内である
・ボタンを留めたり、ファスナーを開閉したりする行為を自分で行える
・ボタンの代わりにマジックテープを付けたり、サスペンダーや前開きの衣類を使用したりするのは可

【部分介助:5点】
・介助を必要としても、半分以上の動作を自分で行える
・介助してもらい、標準時間内に着替えを行える

【全介助:0点】
・動作の半分以上に、介助が必要 女性は、病院から処方されている場合を除き、ガードルやブラジャーの装着は評価に入りません。 また、装具にはコルセットやサポーターも含まれます。 評価基準の覚え方としましては、まず全て一人で行えれば「自立」です。

そして、動作の半分以上を自分で行えれば「部分介助」、半分以上に介助が必要なのが「全介助」となります。

排便コントロール

「排便コントロール」の点数と評価基準は、以下の通りです。

【自立:10点】
・便失禁がない
・浣腸や座薬の使用を自分で行える
・人工肛門(ストーマ)を使用している人は、自分でパウチの交換や便の廃棄ができる

【部分介助:5点】
・まれに便失禁がある
・浣腸や座薬の使用に、介助が必要
・人工肛門のパウチ交換や、便の廃棄に時々介助が必要

【全介助:0点】
・常に便失禁している
・人口肛門のパウチ交換や、便の廃棄全てに介助が必要 便秘しているかどうかは、評価の対象になりません。 例え便秘だとしても、浣腸や座薬を自分で使用できれば、排便コントロールは「自立」とみなされます。

排尿コントロール

「排尿コントロール」の点数と評価基準は、以下の通りです。

【自立:10点】
・尿失禁がない
・留置カテーテルや尿器等の装着や尿の廃棄、管理を自分で行える

【部分介助:5点】
・時々尿失禁がある
・留置カテーテルや尿器等の装着や尿の廃棄、管理に一部介助が必要

【全介助】
・常に尿失禁がある
・常にオムツ内で排尿している
・留置カテーテルや尿器等の装着や尿の廃棄、管理に全て介助が必要

「排尿コントロール」や「排便コントロール」の項目において、「どれほど失禁するか」が評価ポイントとなります。 「トイレ動作」の評価基準と混合されないよう、ご注意ください。

バーセルインデックスのメリットや注意点

バーセルインデックスは、評価基準が世界共通であることや、短時間で行えるなどのメリットがあります。

しかし、一方でいくつか注意点も。 バーセルインデックスの結果が、日常生活動作の評価に直結しないことなどがあげられます。

あなたがバーセルインデックスを正しく活用するためには、メリットや注意点の把握が必要不可欠です。 詳しくご紹介いたします。

バーセルインデックスのメリット

バーセルインデックスのメリットは、以下の4つになります。

①評価項目が少なく、短時間で評価できる バーセルインデックスは、評価項目が10項目と少なく、評価区分も2~4段階とシンプルです。簡易的なため、短時間で評価できるメリットがあります。

②自立度が誰でも一目で分かる バーセルインデックスは、項目ごとに判定基準が決まっているため、自立度が一目で分かりやすくなっています。「自立」と一言で表しても、イメージは人それぞれ違うため、情報の共有が難しいことも。点数で評価することで、医療や看護、介護の現場職員だけでなく、利用者やご家族も自立度が分かりやすいのが特徴です。

③評価基準が世界共通 バーセルインデックスは、日本独自の評価方法ではありません。世界各国で使用されている、共通の評価基準となっています。そのため、国内外問わずADL情報を共有しやすいメリットがあります。

④最大限の能力を測れる バーセルインデックスとは、「できるADL」を評価する方法です。そのため、利用者の最大限の能力を把握することができます。項目ごとに評価が確認できますので、できない動作を把握しやすいのもメリットの一つ。リハビリなどに活用できます バーセルインデックスとは、メリットが多数ある評価ツールなのです。

バーセルインデックスの注意点

メリットの多いバーセルインデックスですが、注意点もいくつかあります。

①日常生活での動作を評価できていない バーセルインデックスでは、「できるADL」を評価しています。リハビリなどで対象動作を実施できれば、「できる」と判断されます。しかし、同じ動作が日常生活では行えていないケースも。必要に応じて、対象者の普段の動作や様子を調査するよう、注意が必要です。

②大まかな評価になる 評価項目が少なく、評価区分もシンプルなことがバーセルインデックスのメリットです。しかし、故に評価がおおまかになる傾向にあります。必要に応じて、他のADL評価方法を組み合わせたり、詳細内容を追記したりすると良いでしょう。

点数が高ければ良いというわけではない バーセルインデックスでは、対象者のADLを把握することが目的です。評価結果の点数が高い=対象者の身体機能が優れている、と判断するために行うのではありません。以前に比べて点数が変化しているか、日常生活動作と相違ないかを見てください。 注意点を把握することで、バーセルインデックスを有効に活用することができるでしょう。

まとめ

バーセルインデックスとは、「できるADL」を評価するツールでした。 簡易的、かつ客観的に、対象者のADLを評価する目的があります。 評価項目は10項目あり、評価基準は覚え方を知って把握しておくと良いでしょう。

また、バーセルインデックスは日常生活での動作を評価できていないなど、注意点がいくつかあります。

しかし、短時間で評価できる、自立度が誰でも一目で分かるなど、メリットも多数ある評価方法なのです。 ぜひあなたも、対象者のADLの把握に、バーセルインデックスを活用してみてください。

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