日常生活で自立した生活を送るために必要なADL(日常生活動作)が低下することは、高齢者や障害者にとって大きな問題です。
この問題を解決するためには、医療・介護職種が共通の評価方法をつかって連携を図ることが大切です。そこで本記事ではADLについて低下する原因や評価方法についてまとめました。
目次
ADL(Activities of Daily Living)は日常生活で必要な動作能力をさす言葉で、身の回りの動作や移動能力などが含まれます。 ADLが低下する理由は下記のとおりです。
・身体
・認知機能
・精神面
・社会的影響 など
ひとつでも機能が低下するとADLの低下につながります。 介護認定の調査項目やリハビリの効果判定にも使われ、自立した生活を送れるかどうかの指標として重要です。
ADLは2種類に分けられます。
本章では上記2つのADLについて詳しく解説します。
BADLとは日常生活動作の一部で、日常生活を送る上で必要不可欠な動作を指します。一般的にADLといえばBADLのことを意味するくらい、同じような意味で使われます。 BADLの内容は具体的には下記の動作があります。
これらの動作ができなければ周囲のサポートが必要になります。BADLを支援することは、高齢化社会において重要な課題であり、介護予防や自立支援につながるでしょう。
IADLは手段的日常生活動作と訳され、BADLよりも複雑な動作や認知能力が要求されます。 IADLの具体例は下記のとおりです。
道具を利用したり自分以外のことまで気にかけたりなど、BADLはIADLよりも高次な能力が必要ということがお分かりいただけると思います。 高齢者の能力はIADL、BADLの順番で低下するのが一般的です。 そのため介護予防においてはIADLをまず考えていくことが重要でしょう。
ADLが低下する原因はさまざまです。 能力低下がすすめば社会参加の機会が減り、さらにADLが低下するという負のスパイラルに繋がります。
そこで本章ではADLが低下する原因について、それぞれ解説していきます。ぜひ予防対策に役立ててください。
筋肉や可動域の低下が起こると、歩行や立ち上がりが難しくなるでしょう。また、転倒リスクが高まればそれだけ介助量の増加に繋がります。 たとえば骨密度が低下している方が転倒して、骨折・手術になることは多いです。
リハビリをしたとしても生活レベルが元通りになることは難しく、レベルを一つ下げた生活スタイルを強いられることは珍しくありません。 普段から運動を取り入れるなど、身体機能の衰えを予防することが大切です。
ADL低下の原因のひとつに生活習慣病が挙げられます。 下記は生活習慣病の一例です。 高血圧 ・糖尿病 ・脂質異常症など、生活習慣病はありふれた病気でADLとの繋がりがイメージできない人は多いかもしれません。
生活習慣病の怖いところは、病状が進行すると神経にもダメージを与えることがあることです。 たとえば糖尿病が進行すれば神経障害によって、手足のしびれや運動能力の低下がよく起こります。 生活習慣病の予防には、適度な運動やバランスの良い食事、禁煙、適切な飲酒などが有効です。
認知症もADL低下の主要な原因のひとつです。 というのも記憶力や判断力が徐々に低下し、自立した生活を送ることが困難になることがあるからです。 たとえば高齢者が家から急にいなくなり、迷子になってしまったという話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
服薬管理や家事、買い物などができなくなれば、周囲からのサポートは必ず必要となります。 認知症予防には適度な運動や脳トレ、社会活動などが有効です。
精神的なストレスやうつ病などが原因となり、日常生活に支障をきたすことがあります。 なぜなら精神的な負担が重くなると、睡眠不足や食事バランスの乱れ、運動不足、社会的な孤立など、生活の質が大きく低下するからです。
そのような生活では身体・認知機能が低下する一方です。 またメンタルの落ち込みは身体の痛みを大きくする特徴もあります。 病は気からという言葉があるように、心の健康はとても大切です。
ADLの評価方法でもっともメジャーなものは、FIMとBIです。
患者さまの状態を客観的に評価できるので、看護計画づくりや治療、リハビリの進捗を把握するときに使われます。
ひとつ目の評価方法はFIMです。 各項目を7段階で評価し、満点の126点になるほどADLレベルが高いといえます。
FIMの特徴は「しているADL」を評価できることです。 しているADLとは、その動作に再現性があり、日常生活で自然に行える動作のこと。そのため患者さまの本当の能力を知ることができます。
<FIMのメリット> ・詳細に評価でき、治療や看護・リハビリ計画の効果を評価しやすい
<デメリット> ・評価者の能力によって結果が左右されることがある
ふたつ目の評価方法はBIです。 食事、入浴、更衣などの日常生活動作を10項目に分類し、自立度を0から100点で評価します。
また、BIはADL維持等加算でも使われる評価法です。 ADL維持等加算とは、利用者のADLに改善が見られた事業所が算定できる加算のことです。
<FIMのメリット> ・採点が簡単 ・100点満点の採点のため、分かりやすい
<デメリット> ・認知機能の評価項目がない
ADL低下がある場合やそれが見込まれるときなどには、具体的な看護計画を立てることがとても大切です。 なぜならADLの低下があると、患者さまの生活の質が低下し、さらに病気やケガの悪化を招く可能性があるからです。
また再入院率が高くなることもあるでしょう。 適切な看護計画やADL評価をもとにした他職種との連携は、患者さまの生活の質改善だけでなく、患者さまをサポートする方の負担軽減にも繋がります。
本記事ではADLの意味や評価方法などについて解説してきました。 ADL低下から起こる諸問題は、高齢化社会においてますます深刻化している課題です。
ADL低下を防止するためには適切なADL評価をもとに、看護師やリハビリ職、介護職などが連携しながら取り組むことがとても大切になります。 ぜひ本記事を参考に、ADL評価やその改善に向けて取り組んでみてください。